マリー・ローランサンを再発見!アートとファッションが交差した「マリー・ローランサンとモード」展

展覧会感想

名古屋市美術館で開催されている「マリー・ローランサンとモード」展に行ってきました。
土曜日の昼過ぎでしたがそれほど混んでおらず、ゆっくりと会場を見て回ることが出来ました。

1920年代のパリで共に活躍したマリー・ローランサンとガブリエル(ココ)・シャネル。
「マリー・ローランサンとモード」展は3つの章とエピローグで構成されており、この二人の活躍を中心にアートとファッションがそれぞれの境界を超えて新しく発展していく様子を見ることができます。
それぞれの章で特に印象に残った作品やエピソードをご紹介いたします。

第1章 レザネ・フォルのパリ

《マドモアゼル・シャネルの肖像》 オランジュリー美術館

ローランサンの作品といえば、甘く微睡むような淡い色彩と優美で儚いフォルムが魅力です。
第1章ではこの作風がよく表れた肖像画が多く展示されています。

《マドモアゼル・シャネルの肖像》は、シャネルがローランサンに肖像画の依頼をしたものの、出来上がりに満足できず描き直しを要求したというエピソードがあります。これにローランサンも譲歩せず、シャネルがこの絵を受け取ることはありませんでした。
描かれている動物は犬、馬、鳥でしょうか。
とてもローランサンらしく、たおやかで美しい女性という印象の肖像画ですが、男性のファッションの考え方を取り入れたり、シンプルで機能的なファッションを提案したシャネルのイメージとはかけ離れていたのかもしれません。

第2章 越境するアート

《優雅な舞踏会あるいは田舎での舞踊》 マリー・ローランサン美術館

ローランサンはバレエ「牝鹿」をはじめ、舞踊・舞台などの美術とデザインや部屋のインテリアなど様々なジャンルの仕事を手掛けるようになり、その世界観をモチーフにした絵画も制作しています。
《優雅な舞踏会あるいは田舎での舞踊》はそれより前の初期の作品ですが、キュビスムの手法を取り入れながらもローランサンらしい柔らかく女性的な世界を表現しているように感じます。
パーツがすごく綺麗なんですよね。指先、腕のライン、つま先、視線。
女性同士の物語特融の甘美な雰囲気が伝わってきます。

《鳩と花》 マリー・ローランサン美術館

そしてこれが今回の展示の中で私が一番好きだった作品《鳩と花》です。
タペストリーの下絵として描かれた作品ですが、しなやかで愛らしくデフォルメされた鳩と花、優美な曲線を描くリボン、それを茎や葉のグリーンと絶妙に重ねられたブルーが引き締めています。
まさに部屋の装飾品として欲しいなと思う作品でした。
複製画があれば絶対買っていたのに残念。

また、シャネルもバレエ「青列車」など、数々の舞台の衣装を手掛けていきます。
会場で「青列車」の映像を観ましたが、スポーツウェアをそのままバレエの衣装として着用しており、当時としてはかなり大胆で斬新なスタイルだったのだろうと想像できます。

第3章 モダンガールの登場

1920年代に登場するモダンガールと、モダンガールのスタイルが生まれるまでのファッションの変化の様子を知ることができるこの章。
なんと言ってもポショワール画が可愛い!
ポール・ポワレやパキャンがデザインした古代ギリシャのヘレニズムや東洋趣味を取り入れたスタイルを身に着けた女性たちが、繊細ながらポショワール特有の温かみのある質感で描かれています。
レトロな色合いもとっても素敵。
他にもドレスやシャネルの帽子などが展示されており、当時の流行の移り変わりがよくわかりました。

《ばらの女》 マリー・ローランサン美術館

1930年代になると、世界恐慌の影響もあり肖像画家としてのローランサンの人気にも陰りが見え始め、彼女の作風にも変化がありました。
消えてしまいそうなくらいに儚く柔らかに描かれていた人物は、甘く女性らしい雰囲気は残しているものの、陰影がはっきりと付けられ人物の存在感が増しています。
色彩も淡いパステルカラーだけでなく鮮やかな色が増え、より華やかになりました。
フェミニンで愛らしく、以前よりもさらに女性らしくなったように思えます。

エピローグ 蘇るモード

《ニコル・グルーと二人の娘、ブノワットとマリオン》
マリー・ローランサン美術館

機能的でシンプルかつモダンなイメージが強いシャネルですが、1983年からアーティスティック・ディレクターとなったカール・ラガーフェルドはローランサンの色彩に着想を得たコレクションを数回発表しています。
特に2011年と2012年のコレクションは鮮明で、《ニコル・グルーと二人の娘、ブノワットとマリオン》にも見られるような色彩で、淡いピンクとグレーを基調とし、わずかな黒で引き締められています。
肖像画の件もありギクシャクとした関係だったローランサンとシャネルですが、長い時を経て二人の感性が融合した新たな作品が生まれるだなんて興味深いですね。

おわりに

私がマリー・ローランサンを知ったのは高校生の時です。
「図書館にある作品集の中から好きな作品を選んで鉛筆で模写を描く」という課題で選んだのがローランサンの作品でした。
当時は「可愛いから」という理由だけで選び、その後もローランサンの作品に触れる機会はありませんでしたが、今でもその作品を選んだ時のことをぼんやりと覚えています。
大人になってから見たローランサンはただ可愛いだけでなく、写実的に描く力があるからこそできるデフォルメで、淡く儚げでありながら甘美でどこか憂いを帯びた女性たちの姿が印象的でした。
キュビスムの影響を受けた作品も、ローランサンらしさがしっかりと表れて面白かったです。
私の拙い文章力では上手く表現できませんが、自分なりにローランサンを「再発見」できたのではないかと思います。
残りの会期もあとわずかとなってしましました。
ローランサンの作品だけをたっぷり見たい!という方には少し物足りないかもしれませんが、「モード」の部分も非常に新鮮で楽しかったので、行こうかどうか迷っている方がいらっしゃいましたら是非足を運んでみて下さい。
オリジナルグッズもおしゃれで可愛いですよ。

「マリー・ローランサンとモード」
会期:2023年6月24日(土)~9月3日(日)
場所:名古屋市美術館
公式ホームページ:https://www.ctv.co.jp/marie-laurencin-nagoya/

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